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カンヌ映画祭コンペティション部門にゴダールが出品!3D映画!?

 今年もいよいよ近づいていたカンヌ映画祭。出品作も出そろいましたが、なんと御年83歳、ヌーヴェルヴァーグの巨匠ジャン=リュック・ゴダールの新作『Adieu au Langage(英題:Goodbye to Language)』がコンペティション部門にエントリーされています。そして更になんと3D映画なのだとか!!ゴダールが3D…!?幾つになってもチャレンジングなお方です。
 数年前に制作にかかり、一度中断していた作品らしいです。近年の作品はその出来栄えよりも、"ゴダールの映画!"という点ばかり注目されるきらいがありますが、新作はどんな映画になるのでしょうか。3Dをどう使ってくるか楽しみなところでもあります。

↓トレーラー公開中!

 他にもコンペティション部門に出品しているのは、マイク・リー、デヴィッド・クローネンバーグ、アトム・エゴヤン、ケン・ローチ、オリヴィエ・アサヤス(アンドレ・テシネ作の脚本や『イルマ・ヴェップ』の監督)、河瀨直美(『萌の朱雀』でカメラ・ドール受賞。昨年は審査員も努めた)、ダルデンヌ兄弟(『ロゼッタ』『ある子供』でパルムドール2度受賞)、トミー・リー・ジョーンズ(監督としては未知数…)など豪華な面々。
 F1モナコGPと合わせて楽しみな時期がやってきました!!(行くわけじゃないんだけどさ)

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映画『なまいきシャルロット』(監督:クロード・ミレール)

L'Effrontée [DIR:Claude Miller, フランス, 96分, 1985年]

 タイトル通り、なまいき盛りな反抗期13歳のシャルロットが主役の思春期映画の金字塔。主演はシャルロット・ゲンズブール、撮影当時は実際に13歳(14歳かも)の頃の作品です。

 思春期真っ只中13歳のシャルロットは目に付くもの全てに反抗的な態度をとってしまいます。天才ピアニストとして華やかな生活を送っている同い年のクララへの羨望や、ナイトクラブで遊ぶ大人たちへの憧れと嫌悪が、嫉妬とイライラの塊となって、家政婦のレオーヌ、父や兄、大切な年下の友達ルルへ遠慮なくあたり散らす日々。そうとう生意気な女の子です。
 
 子供の反抗を描いた映画としてはトリュフォー監督『大人は判ってくれない』のアントワーヌ・ドワネルがあまりにも有名ですね。また、本作と同じくシャルロット・ゲンズブール主演・クロード・ミレール監督コンビによって『大人は判ってくれない』の少女版として焼き直されたような『小さな泥棒』という映画もあります。
 アントワーヌ・ドワネルの"反抗"と、シャルロットの"反抗"は全くの別物です。前者は恵まれない環境における社会への反抗であり、製作者(=大人)の社会的反抗心をアントワーヌに託している側面も強く表れています。しかし、シャルロットの"反抗"は、100%自己チューのお子様な反抗心。父や兄、家政婦は、生意気口ばかり叩くシャルロットを叱りつつも、受け入れ、愛情を持って接しています。アントワーヌとは比べ物にならないほど恵まれた環境にいます。要は本当にただの生意気で我儘な少女なのです。
 大人になるにつれて、自分は何には成れて何には成れないか分かってきてしまうので、他人への憧れは有れども嫉妬することは少なくなってきてしまいます。13歳の少女は、今の自分とは違うどんな理想の自分にもなれると思っていますし、実際に、どんな理想の自分にも成れる可能性を秘めています。そのため何にでも嫉妬してしまいますが、現在の状況を変える手段も分からず、自信も失いがちです。イライラはつのるばかり。思春期に通過すべき、ひときわ純粋な反抗なのです。

 生意気ばかりのシャルロットなのですが、そんな彼女をカメラは温かく見守るように撮ります。喚き散らしたり、泣いたり、笑ったりするシャルロットを、まるで親の目線で見守っているかのようです。フランス映画ではありますが、イタリア映画やラッセ・ハルストラム監督作のような温かみがあります。
 また、舞台となるフランスの片田舎の夏の表情や、クララが滞在する閑静な別荘、クララが弾くベートーベンとモーツァルトのピアノ・コンチェルトの旋律がこの映画に優しい彩りを与えています。そして何よりもこの映画を朗らかにしているのは、作中で度々かかるテーマ曲、リッキ・エ・ポーヴェリの"Sarà Perché Ti Amo"です!映画のラストで、シャルロットとルルの静かな会話からこの曲に入る所は大のお気に入りのシーン。

テーマ曲入りのトレーラー↓

 心に残るシーンは幾つもあります。冒頭のプールへの飛び込みの不安、揺ら揺らときらめく水面。パーティーで優雅にモーツァルトを弾くクララを見つめ、独りで立ち去るシャルロット。クララの演奏会に行くために買った真っ赤な服を家政婦レオーヌに批判されブチ切れた挙句泣き出すシャルロットを、レオーヌが母親のように優しくなだめるシーン、代わりにシャルロットのためにかわいい柄のワンピースを置いておくレオーヌ、それを着てクララの付き人になる期待に胸を膨らませて演奏会に向かうシャルロット。
 
 フランス映画というと、どこか別世界のフィルムの中だけの物語として、距離を置いた観方になってしまうことが多いですが、本作は誰もが通過してきた思春期特有のイライラ感をそのまんまシャルロットが演じてくれているため、日本映画と同じくらいに身近な物語として観ることができます。

 そしてもう一つの大きな見所といえば、なんといってもシャルロットの可愛いらしさ。父セルジュ・ゲンズブールが溺愛して『シャルロット・フォーエヴァー』撮っちゃったり『レモン・インセスト』をデュエットしちゃったりするのものも仕方ないです。この年齢の、この映画の、シャルロット・ゲンズブールでしか絶対に成り立たない可愛さ!もうそれだけで奇跡的な一本です。

 この映画を私が初めて観たのは、高二くらいの頃に午後の授業をさぼってビデオレンタルして観た時でした。当時はシャルロットどころか、セルジュ・ゲンズブールもジェーン・バーキンも知りませんでしたが、何となく手に取って何となく借りていました。それ以来、おそらく両手でも数えられない位の回数は観ているお気に入りの映画なのです。

 とても人気のある作品ではありますが、映画史的には、本作の出来栄えよりも、女優シャルロット・ゲンズブールの始まりの1作(1984年の『残火』でスクリーンデビューしているが、本作でセザール賞の若手女優賞を獲得し人気を得た)であり、ヌーヴェルヴァーグ前後の多くの名作で助監督を務めてきたクロード・ミレールが主監督として撮った作品という位置づけが強いかもしれません。

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★関連記事(シャルロット・ゲンズブール関連)
 →アルバム『IRM』(シャルロット・ゲンズブール)

漫画『茄子』(黒田硫黄)

 『茄子』は、2000年代を代表する実力派マンガ家のひとり黒田硫黄が、2000年~2003年にアフタヌーン誌に連載していた基本1話完結の連作漫画であり、彼の代表作。

 wikipediaの彼の項によると、「文芸評論家の大庭萱朗は、"黒田硫黄のマンガのすべてのコマ、すべてのページに、観ることと描くことの歓び、そして生きることの瑞々しさが横溢している。"と評した」とあるが、この評には全面的に賛同できる。

 筆で描かれた味わいのある濃い画風にはクセがあるが、語られるのは淡々とした日常である。あるひねくれたオジサンを一応の中心に据えてはいるが、各話毎に主人公や舞台/時代設定が入れ替わり、また別の話でも彼らが再登場したりするため、群像劇のような趣もある。
 平々凡々とした日常にも、それを生きている人間には色々と思いがあり、その人の生き方が現れるもの。それが、あってないような物語の段取りとセリフ回しの巧みさ、有無を言わさぬ画力によって、説得力を持って語られる。


 黒田硫黄は、この作品の前に『大日本天狗党絵詞』という濃密な物語の漫画を連載していた。それと比べると、この『茄子』では余計な力が抜け、描きたいことを描きたいように描いているように思う。
 そして、彼の作品(この『茄子』や他の短編)に登場する少年少女たちは皆、とても肯定的に描かれている。ひねたガキンチョも健康優良児もまとめて肯定されている。そこがこの漫画の輝いているところでもあり、清々しく読める所以でもあると思う。

 タイトル通り、作品の所々に茄子が登場する。普通に食材としてだったり、農作物としてや少女と少年を繋ぐ鍵として、時には敵役としてまで茄子が登場。特に茄子が好きな訳ではないのに、これを読むと妙に食べたくなる。巻末にレシピも有り。

 収録作にはお気に入りの話がたくさんある。若隠居したい少年とだらだら生活している少女の第8話や、新婚夫婦が夜食に茄子とビールを獲得するまでの愛と妄想の物語である第15話、親が失踪して弟たちのためにお金を稼ぎたい女の子が奮闘する第9~10話、オジサンの元に時々寝だめしにくるエリートウーマンが登場する第3話、"おまえ自分以外はばかだと思ってるだろう""、"いいじゃないか卑屈じゃなくて"という会話が心に残る第7話など、挙げて行くと枚挙がない。



最近だと新装版の方が入手しやすそう。
 




 ちなみに宮崎駿も『茄子』を絶賛しており、第1巻に収録されている「アンダルシアの夏」は、宮崎駿の力添えを得て高坂希太郎監督&マッド・ハウスによってアニメ映画化されている。



★関連記事(アフタヌーン四季賞出身関連)
 漫画『虫と歌』(市川春子)

嫌いなものを食べられる魔法

 私が小学生だったころ、給食で出る牛乳と生の食パン、ソフト麺がどうしても嫌いで仕方なく、こっそりと隣の席の友人に食べて貰ったりしていました。当時と比べると、最近の給食は子供たちが好むものが多くなっているようですね。でも牛乳様は今でも学校給食の定位置に居座っておられます。
 高知県だったかのある小学校では、試験的に給食の牛乳を廃止し、代わりに小魚等でカルシウムを補う給食に切り替えたというニュースを先日読みました。牛乳費が浮く分によって、消費税が上がっても給食費も据え置きできるのだとか。牛乳は単なる好き嫌いだけでなく、体質的に受け入れられない子もいるはずなので、いい方策だと思います。

 ところで我が家にはこの春に小学2年生になったばかりの息子がいます。彼も私と同じく牛乳と食パンと生野菜が大嫌いで、一年前の入学当初は給食がイヤだイヤだと毎日のように訴えていました。しかし彼の通っている小学校には「嫌いなものは1口だけ食べれば残してよい(1口は必ず食べないといけない)」という方針があるらしく、牛乳やサラダは1口のみで後は残していたそうです。甘いと言えば甘い方針ですが、息子にはその方針が合っていたようで、少しずつ牛乳も飲めるようになってきました。

 1年生の終わりに、2年生の目標を自分で書くという授業があったそうで、息子は「牛乳を全部飲む。なわ跳びを飛べるようになる」と書いていました。
 そしてなんと、2年生の給食初日から、牛乳を全部飲み、嫌いなニンジンサラダも完食できたのだそうです!

 急にそんなこと出来る訳ない!と思っちゃいましたが、それが出来たのは、彼自らが編み出した「嫌いなものを食べられる魔法」を使ったからなのです。
 折り紙に、その魔法の手順を書いてくれました。

" きらいなものをたべるまほう
 あたたかいおちゃをのむ
 または はなをつまむ
 一かい休憩する。
 すきな人のことをかんがえる "

 私も小学生時代にこの素敵な魔法を知っていたら、きっと牛乳も食パンも完食できていただろうなぁ!

 ちなみに、なわ飛びの方はまだ上手く飛べないようです。なわ飛びが上手になる魔法を知っている方がいたら伝授頂けると幸いです。

ミックステープ『House of Balloons』(The Weeknd)

House of Balloons / The Weeknd [XO(MIXTAPE), 2011]

 R&BシンガーのThe Weeknd(Weekendとは別モノよ)が、2011年に自身のサイトでフリーダウンロード公開したミックステープ。これが、Pitchforkを始め各方面から脚光を浴び一躍R&B/クラブシーンの期待の新星となりました。
 最近ではミックステープをフリー公開する新人アーティストや、アルバム発売前にレーベルが公式に全曲フリー公開したりと、インターネット上の無料公開によってプロモーション展開することも多くなってきました。日本ではまだまだJASRACさんや旧体質レコード会社さんが頑なに意地張っているせいで、どんどん時代から取り残されていっていますが、そのうち自業自得に陥ってざまぁになるだけ(もうなっている?)なのでまあいいか。

 で、この作品なのですが、ミックステープとはいえ話題になっただけあって相当の完成度なのです。セクシーだけど汗臭くない清潔R&Bな歌声に、近年のインディーロックやチルウェイブ、ダブステップを通過した、ややダークで洗練されたメロウグルーヴなサウンド。まさに現在進行形の感性で作られていて、R&Bというよりクラブミュージックとして聴いた方がしっくり来るかもしれないです。

[ House of Balloons / The Weeknd ]
 現在はミックステープ総合サイトのMIXTAPE MONKEYからダウンロード可能です。


"Tr.4 The Morning" ゆる~いグルーヴがめちゃくくちゃ気持イイ。


メロディアスで官能的な"Tr5. Wicked Games"


スージー&ザ・バンシーズの"Happy House"をサンプリングした"Tr.3 House Of Balloons - Glass Table Girls"


 サンプリングネタとしては他にも、ビーチ・ハウスの"Gila"をサンプリングした"Tr.8 Loft Music"や、コクトー・ツインズの"Cherry Coloured Funk"をサンプリングした"Tr.9 The Knowing"など、インディーシーンからの上手な借用が多いです。


 The Weekndは昨年(2013年)、『Kiss Land』という新作アルバムを発表しており、この『House of Balloons』より多少クラブ感が薄まって、より一般層にアピールできそうなアルバムになっていました。うまく当たると世界のメジャーシーンでもブレイクできちゃうかもな予感もあります(本人がそれを目指しているかはともかくとして)。

[ House of Balloons / The Weeknd ]