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アルバム『IRM』(シャルロット・ゲンズブール)

IRM / Charlotte Gainsbourg (2009)

 ご存知セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの愛娘で、近年は女優としての活躍が目立っているシャルロットの2009年のアルバムです。
 彼女の音楽活動としては、13歳の頃に父セルジュの名盤『Love on the Beat』(1984)収録の"Lemon Incest"でセルジュとデュエットしたところから始まり、その後1986年にはやはりセルジュのプロデュースでアルバム『Charlotte For Ever』を発表しています。これは、セルジュが監督・脚本を担当した同名のちょいとアブナイ映画(セルジュとシャルが本人役で出演している近親相関を思わせるストーリー)と併せてのリリースでした。
 その後シャルロットは女優業を優先し、音楽活動からは遠ざかっていました。映画では先程の『シャルロット・フォーエバー』以降はセルジュと絡んでいません(反面、母ジェーン・バーキンとは時々共演しています)が、音楽をやっている限りはセルジュの影が付きまとってしまうことを避けたかったのでしょうか。単に歌手より女優の方が楽しかっただけかもしれませんが、その辺りはよく分かりません。


 父セルジュを1991年に亡くした後、一流女優の地位を確立していた2006年になってシャルロットは突然音楽活動を再開して『5:55』というアルバムを発表しました。この『5:55』は、フランス語での歌がほとんどであるものの、ナイジェル・ゴッドリッチのプロデュース、作詞・作曲にエールやジャーヴィス・コッカー(Pulp)が携わっているなど、フレンチポップの名残を残しつつも現在のオルタナに接近した新感触のアルバムでした。
 その素晴らしい出来を度外視したとしても、高校生の頃に『なまいきシャルロット』で惚れて以来、シャルロットやセルジュ・ゲンズブール周りを追いかけ回していた私にとっては、シャルロットの音楽活動再開はとても嬉しいニュースでした。

 
 今回紹介するアルバムは、その次作となる2009年発表の『IRM』です。シャルロットにとっては3rdアルバムにあたる作品。
 このアルバムのプロデュースはなんとBECK!!収録曲も、ジャン=ピエール・フェルランが1970年に書いた"Le Chat du Café des Artistes"のカバー以外は全てBECKの手によるものです。
 BECKと言えば、デビュー当時からセルジュ・ゲンズブールの大ファンであることを公言しており、セルジュのPVをまねてみたり、ライブにジェーン・バーキンを招いたり、セルジュのトリビュートライブに参加したりという程なので、BECK自身としても、シャルロットをプロデュースするというのは渾身の力を持って臨んだ仕事だったのだと思います。そしてそれはこのアルバムで大成功しています。
 ベック一流の力の抜けたオルタナ感と時代に敏感なセンス、儚げだった昔のシャルロット、母ジェーンのように強い大人の女性に成長した現在のシャルロットの姿が、すべて一体となったようなアルバムに仕上がっています。

[ IRM / Charlotte Gainsbourg ]





 シングル曲の"Tr.5 Heaven Can Wait"は、これまでのBECK関連作の中でもトップクラスの曲だと思います。シャルとBECKが登場するPVも見ものですよ。


 アルバム未収録ですが、この曲を気鋭のビートメーカーNosaj Thingがリミックスしたバージョンも特設サイトからダウンロードできました。彼らしいゆらゆらビートの気持ちいい良MIXです。


 他にも、この夢の共演と言うべきアルバムに収録されている曲は、名前だけの共演作などではなく、見事に二人のセンスが融合された曲ばかりの最高のアルバムです。


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