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アルバム『フィーリン・グルーヴィ』(ハーパーズ・ビザール)

Feelin' Groovy / Harpers Bizarre [Warner, 1967]

 A&M系やバーバンクサウンド、カート・ベッチャー&ゲイリー・アッシャーらの活躍するソフトロック黄金期が幕を開ける1967年に発表されたのハーパーズ・ビザールのデビューアルバム。ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』の翌年ですね。
 バーバンクサウンド確立前ということで、綿密なコーラスやオーケストレーションはまだ控えめで、シンプルで可愛らしいナンバーが多いのですが、それ故に返ってハーパーズ・ビザールというグループの魅力を引き出すことに成功しているアルバムだと思います。とは言え、コーラスワークや楽器の使い方には豪華アレンジャー陣の力量が垣間見れらる作品でもあります。

 プロデュースはレニー・ワロンカー。幼馴染のランディ・ニューマンや名コンビとなるヴァン・ダイク・パークスと共にワーナーレーベルでバーバンクサウンドを築き上げ、後年にはワーナーの社長にまで登りつめることになる才人です。
 このアルバムには、作曲・アレンジャーとしてランディ・ニューマン、ヴァン・ダイク・パークス、ペリー・ボトキン、レオン・ラッセルが参加しています。後の超大物ばかりで名前だけで目が眩みそうな布陣。でも当時は彼らはまだ皆、駆け出しの若手だったはず。無名の天才たちが不思議な引力に引き寄せられて集まり、大きな潮流を生み出すというのは音楽に限らず歴史の中で度々起こってきたことですが、まさにソフトロックにおけるそのような奇跡の始まりがここにあります。

[ Feelin' Groovy / Harpers Bizarre ]





 個人的には、このアルバムの中でもレオン・ラッセルの仕事ぶりに目がいきます。彼が作曲に携わった"Tr.9 I Can Hear The Darkness"なんかは、翌年のアルバム『The Secret Life Of Harpers Bizarre』に収録される"The Drifter"などのソフトロックの名曲たちと肩を並べる出来だと思います。同じく彼が作曲した"Tr.4 Raspberry Rug"は、アラブ調(?)のイントロから始まり、ハーパーズ・ビザール流の柔らかなソフトロックへ展開する素敵なナンバー。"Tr.3 Come Love"の巧みなコーラスアレンジも彼の仕業でしょうか。

 ハーパーズ・ビザールは過去の名曲を取り上げて自分たちの音楽に仕立て直すことにも積極的でした。"古き良き"オールディーズ・ナンバーの"Tr.2 Happy Talk"も、彼ららしいチアフルかつふんわりとしたナンバーに生まれ変わっています。サイモン&ガーファンクルのカバー"Tr5. The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)"も自分たちの曲にしてしまっています。
 アルバム最後の"Tr.10 Simon Smith and the Amazing Dancing Bear"も、アラン・プライス(アニマルズ初期メンバー)にランディ・ニューマンが書いた名曲で、他のミュージシャンも多くカバーしています。

"Tr5. The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)"

 ボーナストラックとして収録されている"Bye Bye Bye"は、翌年の『The Secret Life Of Harpers Bizarre』にメドレーの一部として収録されている曲のオリジナル版かな。元々何年に書かれた曲か分かりませんが、本盤のバージョンからはブリティッシュ・インヴェンションの影響も感じられ、そういえば時代的に繋がっているんだよなと妙な感慨を覚えたりしました。



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