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漫画『機動警察パトレイバー』(ゆうきまさみ)

 どうせよくあるロボット物の少年マンガでしょ!と思って読んでいない方には、一度手に取ってもらいたいマンガです。確かに序盤は少年マンガ特有のノリが強めではありますが、中盤から加速度的にストーリーが面白くなっていきます。週刊少年サンデーで連載されていたマンガですが、中盤以降に関して言えば、青年誌の方が合っていたんじゃないかと思うくらい大人でも楽しめるストーリー展開になっていきます。
 大好きなマンガなので最初に宣伝文句を書いちゃいますが、「"踊る大捜査線"に大きな影響を与えたマンガ」でもあります。実際、"踊る大捜査線"の作中にパトレイバーのオマージュ的な設定やシーンが幾つかあります。

 時代設定は当時としての近未来1998年(連載開始が1988年)、"レイバー"と呼ばれる作業用人型ロボットが、重機に代わって工事の現場などで使われることが一般化した社会が舞台です。レイバーを用いた犯罪が多発するようになったため、警視庁は警察用レイバー部隊として特車二課を発足させます。その中の特車二課第二小隊に配属された面々がこのマンガの主役です。

 この作品の大きな特徴であり魅力である点として、舞台設定がとても現実的であることが挙げられます。ガンダムみたいなロボットありきの舞台設定ではなく、作業用の大型ロボットが普及しているという以外は現実の近未来の東京が舞台となっているのです。当然、登場人物もストーリーもリアルです(少年マンガにしては)。ただ、作業用の大型ロボットが現実世界で普及すると想定しても、人型である必要性はまったくないのですが、そこだけはSF的なロマンということで!


 もうひとつの大きな魅力は、個性豊かな登場人物たちと彼らの成長や対立の物語です。第二小隊は急遽編成されたために若者ばかりのメンバー編成で個性的な面々が揃っており、彼らが成長していく過程を描いた群像劇という側面もあります。その第二小隊を率いる後藤隊長は、ノリが軽く飄々としているが昔は"カミソリ後藤"と呼ばれていた程の切れ者。後藤隊長は、もしかすると主人公(泉野明)よりも、ファンからの人気が高いキャラかもしれません。
 また、世界的巨大企業を隠れ蓑にしてレイバー犯罪を繰り返す内海も、後藤隊長に負けないくらい飄々とした男で、悪役ながらとても魅力あるキャラ付けがされています。
 後藤隊長を中心とする第二小隊と、内海の思惑、途中から第二小隊に加わる熊耳の想いとが絡み合う、終盤の緊迫したストーリーは必見です!!どうしても伝えたいことなのでもう一度書きます。終盤の緊迫したストーリーは必見です!!

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 このパトレイバーという作品は、ゆうきまさみのマンガではあるのですが、原案はヘッドギアというグループによるものです。メンバーは、ゆうきまさみに加えて、押井守、出渕裕、高田明美、伊藤和典というアニメ界の大物揃い。マンガ連載前からアニメ版が制作されていて、OVAとして発売されました(発売はマンガ版連載開始後)。その後、特にマンガ版で人気を集めTVアニメ化もされました。
 また、押井守が監督したアニメ映画版(特に1作目)はジャパニメーションの代表作として世界レベルでの評価を得ています。そして今年、とうとう実写化されました!




 私は小学生の時からパトレイバー大好き好きオタク少年で、アニメビデオも映画も関連本もプラモデルもゲーム版も音楽テープも沢山持っていました。私はこれまでに5回の引っ越ししていているのですが、引っ越しの度に、余計な荷物をなくすためにコミックスやCDを泣く泣く廃棄したり実家に置いて行ったりしています。その中で唯、パトレイバーのコミックスだけは小学生の頃から現在まで20年以上常に手元に置いています。

 そういえば、むかしNHK-BSで「BSマンガ夜話」という面白い番組がありました。各回1作品を取り上げ、大月隆寛、夏目房之介、いしかわじゅん、岡田斗司夫らレギュラーメンバーと、その漫画のファンであるゲストタレントたちが、漫画家や評論家たちが賞賛も批判もありで議論を交わすとても面白い企画でした。
 その番組でパトレイバーが取り上げられ回がありました。10年以上前のことなのでうろ覚えなのですが、番組中でいしかわじゅん氏が、「ゆうきまさみの前作"究極超人あ~る"は80年代的な("うる星やつら"の様な)楽しければいい的な無責任なノリが嫌いだった。だけど、パトレイバーではそこを脱し、社会で責任を持つことを描けている作品になった。」「もともとこんなストーリー漫画を描ける漫画家だとは思っていなかった。ギャグ漫画とストーリー漫画の作り方は実はとても似ていて、ギャグ漫画の"究極超人あ~る"を描いている内に、ストーリー漫画の描き方が分かってきたのだろう。」ようなことを言っていました。私は"究極超人あ~る"も"うる星やつら"も好きなのですが、氏の見解にはそれはそれで成るほどなぁと納得した記憶があります。




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