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アルバム『五月の風』(ナラ・レオン)

Vento De Maio / Nara Leao (1967)

 きょうは、ようやく訪れた一年ぶりの春の香りに鼻がくすぐったくなるような気持ちのよい陽気でした。あまりに気持ちがよいので、お昼前にうとうと午睡しかけつつ、こんな日のこんな時間にはフォーレのヴァイオリン・ソナタだと思ったのですが未だiTunesに取り込んでいなかったらしく、物置の奥からCDを探し出す羽目に。フォーレを探していたはずが、これまたiTunesに見取込みであったナラ・レオンのアルバム『五月の風 』を発見。5月にはまだ早いけど、一足お先に本格的な春を満喫させて貰おうかとこのアルバムを聴くことにしました。
 
 ナラ・レオンは、先日紹介した『トロピカリア』にも参加していたボサノヴァ・シンガー。といっても本人は、社会情勢の不安定だった当時のブラジルにおいて、その能天気さに嫌気がさしボサノヴァを否定したりもしていました。そんな時期にリリースされたアルバムですので、純粋なボサノヴァというよりは、ボサノヴァ以降の洗練さを取り入れたブラジル伝統音楽いった趣の曲が並びます。
 ナラ・レオンのアルバムなら、本格的にボサノヴァと向き合って作られた『Dez Anos Depois(邦題:美しきボサノヴァのミューズ)』が一番のお気に入りなのですが、そちらはもうボサノヴァ史上歴代最高傑作なので別格扱いとして、この『五月の風』も十分に名作といえる出来栄えであります。
 冒頭を飾る明るいサンバ調の「Quem Te Viu, Quem Te Ve」、表題曲でタイトル通りの爽やかな「五月の風(Vento de Maio)」など、ぽかぽかした陽差しのなかを湿気を帯びたそよ風が流れすぎるこの季節にぴったりの曲ばかりです。ナラの、軽やかながらしっとりとした歌唱も堪能するに値するものですが、シコ・ブアルキやドリ・カイミ、シドニー・ミラー、ジルベルト・ジルらによって書かれた曲じたいも彼女の歌声と相性のよい素敵な曲が揃っています。

 なお、私が持っている盤では、ボーナストラックとして、ナラ・レオンとシドニー・ミラーのデュエット曲「A Estrada E O Violeiro」が収録されています。これがまた素晴らしいので、輸入盤を購入される際にはボーナストラックの有無もご注意下さい。まあ、同曲はシドニー・ミラーのアルバムでも聴けるんですけどね。

[ 五月の風 / ナラ・レオン ]




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